星降るまち、井原。美星天文台と桜、デニムの町を歩く

ご当地

夜空を守る町に、国際的な認定制度があるとは知りませんでした。

岡山県井原市の美星町は、2021年11月、国際ダークスカイ協会から「星空保護区」に認定されています。町や市といった自治体そのものが対象となる「ダークスカイ・コミュニティ」という部門で、アジアで最初の認定でした。「星空版の世界遺産」とも称される制度があること自体、この町を知るまで考えたこともありませんでした。

もっとも、井原市は星だけの町ではありません。桜の堤があり、昔ながらの商店街があり、世界のブランドが認めるデニムの産地でもあります。広島県との境にあるこの市を、いくつかの入口から歩いてみます。

アジア初の「星空保護区」——美星町

認定の背景にあるのは、思いつきではない時間の積み重ねです。美星町が全国に先駆けて光害防止条例を制定したのは1989年11月。星空を守るという発想がまだ一般的でなかった頃から、この町は屋外照明に手を入れ続けてきました。条例制定から30年を経て国際基準に合わせた改正を行い、2021年4月28日に申請。同年11月1日付(米国アリゾナ州現地時間)、審査委員会の全会一致で認定に至っています。

「美星」という地名が先にあり、その名にふさわしい夜空を守ってきた——という順序が、この話の妙味だと思います。

美星天文台で、101cmの望遠鏡をのぞく

星空保護区の空を、いちばん確実に体験できる場所が美星天文台です。吉備高原の高台に建ち、360度の展望が開けています。備えられているのは口径101cmの望遠鏡。国内でも有数の規模を持つ公開天文台で、専門の職員が星空を案内してくれます。

晴れた夜には101cm望遠鏡や双眼鏡での観望会が行われ、天候が悪い日でも立体映像システム「4D2U」の上映があります。昼の開館時間には、晴れていれば、青空のなかに輝く一等星を望遠鏡で観察できます。夜に訪れるのが難しい人も、昼の天文台を楽しめます。

開館時間は曜日で変わります(本記事作成時点)。火・水は9:30〜16:00。金・土・日・月は13:45〜16:00と、夜の18:00〜22:00(入館は21:30まで)。休館日は毎週木曜と祝日の翌日、年末年始。入館料は小学生以上1人300円です。夜の観望会の開始時間は季節によって前後します。

台風や積雪での臨時休館、流星群などのイベント時の予約制入場もあります。料金や開館時間は変わることがあるため、訪れる前に公式サイトで最新の案内を確かめてください。

口径101cmの望遠鏡を備える美星天文台

春の井原堤、夜のぼんぼり

市街地を流れる小田川。その堤に、桜並木が続きます。井原堤(いばらづつみ)です。

堤防沿いに約2km続く桜のトンネルは、井原市を代表する春の風景として知られています。井原桜まつりの期間中は、夜になるとぼんぼりが灯り、夜桜が楽しめます。近くの相原公園とあわせて歩く人も多いようです。

小田川沿いの桜の名所・井原堤の桜並木

星を見上げる夜と、桜を歩く春。井原には、季節を変えて訪れたくなる風景があります。

市街地に残る通り——サンロード中町

井原町の市街地には、昔ながらの商店や建物が残る通りがあります。その一角が、サンロード中町(中町商店街)です。

井原市のサンロード中町商店街の街並み

夏には、この商店街を会場に土曜夜市が開かれています。屋台が出て、ステージイベントもある夜。ただし開催日や会場、催しの内容は年によって変わるため、行くつもりなら井原市観光協会などで最新の情報を確認してください。

観光地としてつくられた古さとは、少し違う風景です。昔ながらの商店や建物が並び、井原の市街地が重ねてきた時間を感じさせます。

もうひとつの顔——デニムと、彫刻家

井原市は「デニムの聖地」とも呼ばれます。井原市によれば、絶妙な色合いや風合いを再現する技術が認められ、ヨーロッパをはじめ世界的なファッションブランドでも井原産のデニムが採用されてきました。井原駅の構内には井原デニムを扱うショップがあり、産地の仕事に触れられます。

もうひとつ。近代日本を代表する彫刻家・平櫛田中は、この市の出身です。市立平櫛田中美術館では、その作品がまとめて見られます。星、桜、通り、デニム、彫刻。ひとつの市に、これだけ違う入口があるのは面白いところです。

旅の記憶を、しおりにして持ち帰る

「星降るまち井原。」。文字のご当地しおりに、そんな一枚があります。

言葉が、フォントの姿かたちのまま繊細に切り取られている。光にかざすと、抜かれた文字の輪郭から向こうが透けます。本に挟めば、ページを開くたびにその言葉が戻ってくる。写真に残した風景とはまた違い、しおりは読書のたびに手のなかに現れます。

美星町で見上げた夜空を思い出すきっかけとして、あるいは井原へ行った誰かへの土産として。

文字の井原のしおり「星降るまち井原。」

「星降るまち井原。」のしおりを見る

あわせて贈りたい

岡山の他のまちを訪ねた人には、ご当地しおりの他の一枚も。旅の数だけ、言葉があります。

ご当地のしおりを見る

行く前に確かめておきたいこと

井原市の玄関口は、井原鉄道の井原駅です。井原鉄道によれば、駅舎は市にゆかりのある弓の名手・那須与一にちなみ、弓と矢を模したデザイン。扇の的を一射で射抜いた伝承から、受験シーズンには合格祈願に訪れる人もいるそうです。構内には観光案内所と、井原デニムを扱うショップがあります。

市域は広く、美星町は市街地から離れた高原にあるため、車での移動が便利です。美星天文台の当日のイベントや、天文台周辺の食事・宿泊については、公式サイトに案内があります。井原市全体の見どころやイベントは、井原市観光協会のサイトが最新です。

よくある質問(FAQ)

Q. 星空保護区とは何ですか?

光害の影響を受けにくい、暗く美しい夜空を守る優れた取り組みを行っている地域を、国際ダークスカイ協会が認定する制度です。夜空の明るさを等級で格付けするものではありません。井原市美星町は2021年11月1日付で、自治体単位が対象の「ダークスカイ・コミュニティ」部門にアジアで初めて認定されました。

Q. 美星天文台は予約が必要ですか?

通常の開館時は予約なしで入館できます。ただし流星群の観察会など予約制のイベント開催時は、予約がないと入場できない場合があります。訪問前に公式サイトのイベント一覧を確認してください。

Q. 井原堤の桜はいつごろが見ごろですか?

例年、春の桜のシーズンに多くの花見客が訪れます。井原桜まつりの期間中は夜間にぼんぼりが灯り、夜桜も楽しめます。開花時期は年によって前後するため、井原市観光協会の発表をご確認ください。

Q. 「文字のしおり」はどんなものですか?

言葉(フレーズ)を、フォントの姿かたちのまま繊細に切り抜いたしおりです。「星降るまち井原。」はご当地シリーズの一枚。台紙の色を選べるタイプもあり、本に挟んで使えます。

まとめ

井原市を一言でいうなら、夜が自慢の町です。30年以上前から守り続けた条例と、アジア初の認定と、101cmの望遠鏡。それだけの理由がある空です。

「星降るまち井原。」のしおりを見る

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