現存十二天守のなかで、最も新しい時代に再建された天守をご存じでしょうか。松山市の中心部、勝山の山頂に立つ松山城です。現在の大天守は幕末に再建されたもので、江戸時代の城郭建築の締めくくりを伝える貴重な存在として知られています。この記事では、その成り立ちから構造の見どころ、アクセスや料金、周辺のまわり方まで、訪れる前に知っておきたいことをまとめました。
松山城の歴史
加藤嘉明が築いた勝山の城
1602年(慶長7年)、関ヶ原の戦いの功績で20万石の大名となった加藤嘉明が、松山平野の中央にそびえる勝山に新しい城を構えました。これが松山城のはじまりです。築城の翌1603年、それまで「勝山」と呼ばれていた土地は「松山」と改められたと伝わります。嘉明が会津へ転じたあとは蒲生忠知が二之丸までを整え、続いて松平定行が伊勢桑名から入りました。以来、松平家が明治維新まで城主を務めています。
五重から三重へ、そして落雷による焼失
創建当初の天守は五重だったと伝わりますが、のちに三重へ改められました。地盤への配慮とも、幕府への遠慮ともいわれ、はっきりした理由は確認できる資料では定まっていません。その天守も1784年(天明4年)の元旦、落雷によって本壇の主要な建物とともに焼け落ちてしまいます。
幕末に再建された、現存で最も新しい天守
再建の工事は長い年月をかけて進み、幕末に現在の大天守が完成しました。江戸時代以前に建てられた天守が今も残る「現存十二天守」のなかで、松山城の天守は最も新しい時期に再建された一棟にあたります。明治の廃城令や戦火をくぐり抜け、天守を含む21棟が国の重要文化財に、城跡は国の史跡に指定されています。
松山城の特徴と構造
唯一の葵の御紋を掲げる連立式天守
大天守は三重三階地下一階の層塔型。これを中心に、小天守や隅櫓を渡櫓でつないだ「連立式天守」という壮麗な構えをとります。同じ連立式は現存十二天守では姫路城と松山城だけ。しかも松山城は親藩・松平家の手で建てられたため、現存する天守で唯一、瓦などに「葵の御紋」が見られます。城好きなら、屋根まわりで三つ葉葵をさがしてみてください。
時代で読み解ける石垣と、貴重な登り石垣
石垣は積まれた時代によって技法が違います。ふもと寄りでは石の角や面を加工して積む「打込接(うちこみはぎ)」、天守に近づくにつれてさらに加工度の高い「切込接(きりこみはぎ)」へと変わり、積み方を見比べるだけでおよその年代を推し量れます。なかでも注目したいのが「登り石垣」。ふもとの曲輪と山上の本丸を、山の斜面を登るように結ぶ防備の石垣です。松山城では、二之丸と標高132メートルの本丸の間に設けられたものと考えられており、現存十二天守の城郭では松山城と彦根城だけにその存在が確認されています。
本壇へ、迷路のような一本道
天守など中枢の建物が集まる区域を「本壇」と呼びます。ここへの出入口は一ノ門のただ一カ所。そこから天守までは、高い石垣と櫓に囲まれた進入路を、いくつもの門をくぐりながら進むことになります。連なる櫓と渡櫓は、入り込んだ敵を惑わせ、四方から攻撃できるよう緻密に配されました。ただ住むための館ではなく、戦いに備えた要塞だったことが、この立体的な造りから伝わってきます。
松山城の見どころ
天守最上階からの眺め
三重の天守を登りきると、松山の市街地と瀬戸内海が一望に開けます。春は桜、秋は紅葉が城と重なり、季節ごとに違う顔を見せてくれる場所です。夜にはライトアップされ、市街地からその姿を仰ぐこともできます。
天守内の展示と、甲冑試着体験
天守や連なる櫓の内部は資料の展示スペースになっていて、槍や刀剣、甲冑などの展示物を見ることができます。天守1階には甲冑を試着できる体験コーナーも設けられていますが、点検やメンテナンスで利用できない場合があります。歴史好きなら、展示を眺めながらゆっくり歩きたい場所です。
四季で変わる城山の表情
松山城のまわりは、桜と紅葉の名所として知られます。ソメイヨシノをはじめ何種類もの桜が植えられ、開花期には大勢の花見客でにぎわいます。紅葉の時季には色づいた木々と城のコントラストを求めて、写真を撮る人が絶えません。梅やツツジなど、桜と紅葉のあいだにも見ごろの花が続きます。
旅の記念に、松山城の言葉をひとつ
登りきった達成感や、瀬戸内海まで見晴らした一日の余韻は、写真だけではなかなか持ち帰れないものです。「文字のお城のしおり『松山城』」は、城の名がフォントごと繊細に切り抜かれた一枚。ページを開くたびに、その日の眺めや風の感じがふっと戻ってきます。旅の栞として、あるいは一緒に登った人への贈り物として、そっと連れて帰ってみてください。

松山城へのアクセス
営業時間と、時間に余裕をもつコツ
天守と二之丸史跡庭園は9時から17時まで(8月は17時半まで、12月〜1月は16時半まで)。天守への入場は営業終了の30分前で締め切られます。ロープウェイは8時半から17時半、リフトは8時半から17時までで、雨の日はリフトが止まります。東雲口駅舎から天守のきっぷ売り場までは約30分。逆算して、閉門1時間前には駅舎に着いておくと慌てずにすみます。
公共交通機関を利用する場合
松山城は松山市の中心部にあります。JR松山駅や松山市駅の方面から市内電車(路面電車)に乗り、「大街道」電停で下車。ロープウェイ東雲口駅舎までは徒歩約5分です。そこからロープウェイなら約3分、リフトなら約6分で、八合目の山頂駅「長者ヶ平」に着きます。山頂駅から天守入口までは徒歩約10分。麓には観光案内所があり、地図やパンフレットを受け取れるので、はじめてでも迷いにくいはずです。
徒歩で登城道を歩く場合
ロープウェイやリフトを使わず、歩いて登る道も4つあります。いずれも元気な人でもなかなかの坂道で、登城道を利用すると麓から約20〜30分。実際に「城攻め」の気分を味わいたいなら、あえて自分の足で登ってみるのもおすすめです。大街道周辺から城山公園を抜けるルートは自然が豊かで、園内にはベンチや休憩所も整っています。
自家用車を利用する場合
車で訪れる場合は、ロープウェイのりばに近い松山城駐車場(喜与町駐車場)などが利用できます。のりばまで徒歩約2分、普通車は2時間420円、以後30分ごとに100円です。松山市内から標識に従えばたどり着けますが、桜や紅葉のシーズンは混み合うため、早めの到着が安心です。料金や場所は変わることがあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
松山城周辺の観光スポット
道後温泉
松山城から足をのばせる道後温泉は、日本最古ともいわれる温泉地です。道後温泉本館は国の重要文化財に指定された建物で、風情ある温泉街のシンボル。城めぐりで歩き疲れた体を、ここでほぐしていくのもよいものです。周辺には土産物店や飲食店が並び、散策そのものも楽しめます。

坂の上の雲ミュージアム
松山城のふもとには、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』にちなんだミュージアムがあります。明治期の松山を生きた人物たちの物語を、建築家・安藤忠雄が手がけた館内でたどれる場所です。関連する資料や文献が展示され、特別展や講演会も開かれています。作品を読んでから訪れると、街の見え方が変わってきます。
松山市駅周辺
松山市駅の周辺には、ショッピング施設や飲食店が集まっています。観光の合間に買い物や食事を挟むのにちょうどよく、地元のグルメや土産を探すのにも向いたエリアです。城をひとまわりしたあと、愛媛の特産品を求めて立ち寄ってみてください。
参考リンク(公式情報)
料金・営業時間・運行状況は変更されることがあります。おでかけ前に、下記の公式情報でご確認ください(本記事の内容は作成時点のものです)。
よくある質問(FAQ)
Q. 松山城は現存天守ですか?
はい。江戸時代以前に建てられた天守が今も残る「現存十二天守」のひとつです。現在の天守は幕末に再建された三代目で、現存する12棟のなかで最も新しい時期に再建された天守にあたります。
Q. 観覧料はいくらですか?
天守の観覧料は大人520円、小学生160円です。ロープウェイ・リフトを利用する場合は、往復で大人520円・小学生260円が別途かかります。料金は変わることがあるため、最新の情報は松山城公式サイトでご確認ください。
Q. 松山城へのアクセスはどうすればよいですか?
市内電車(路面電車)「大街道」電停で下車し、ロープウェイ東雲口駅舎まで徒歩約5分。ロープウェイで山頂駅「長者ヶ平」まで約3分、そこから天守入口まで徒歩約10分です。4つの登城道を使って歩いて登ることもできます。
Q. 見学の所要時間はどれくらいですか?
東雲口駅舎から天守のきっぷ売り場までは約30分が目安です。天守内の観覧まで含めると2〜3時間ほど。二之丸史跡庭園(大人200円・小人100円)や道後温泉もあわせて巡るなら、半日から1日の余裕をもって計画するのがおすすめです。
まとめ
松山城の天守は、江戸の世が終わりに近づくなかで再建された、現存十二天守で最も新しい時期の一棟です。連立式の構え、唯一の葵の御紋、松山と彦根にしか残らない登り石垣――どれも、この城だからこそ見られるものです。歴史の来歴を頭の片隅に置いて登れば、同じ石垣も門も、ずいぶん違って見えてくるはずです。
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