滋賀県彦根市にそびえる彦根城は、江戸時代初期に築かれた近世城郭です。金亀山(こんきやま)と呼ばれる小高い山を利用して築かれた平山城で、「金亀城(こんきじょう)」の別名でも親しまれています。
彦根城の天守は、現存12天守のひとつであり、松本城・犬山城・姫路城・松江城とともに国宝に指定されている貴重な天守です。城内には天守のほか、天秤櫓、太鼓門櫓、西の丸三重櫓などの重要文化財が残り、麓には名勝・玄宮楽々園も広がります。
この記事では、彦根城の歴史と見どころを、公式資料にもとづいてわかりやすく紹介します。井伊家ゆかりの城としての成り立ち、国宝天守の特徴、玄宮園や彦根城博物館の楽しみ方、アクセスと利用案内まで、訪れる前に知っておきたい情報をまとめました。
彦根城はどんなお城?
「金亀城」と呼ばれる理由
彦根城は、琵琶湖東岸に近い彦根山に築かれたお城です。この彦根山は金亀山とも呼ばれ、そこに築かれたことから、彦根城には「金亀城」という別名があります。現在の住所にも「金亀町」の名が残っており、城と土地のつながりを感じさせてくれます。
天守の規模は姫路城のように大きくはありませんが、三重三階の姿に、切妻破風・入母屋破風・唐破風などが巧みに組み合わされ、変化に富んだ美しい外観を見せます。白壁と黒い瓦、石垣の上に立つ端正な姿は、彦根城ならではの魅力です。
国宝天守を持つ現存12天守のひとつ
彦根城天守は、江戸時代以前に建てられた天守が現在まで残る「現存12天守」のひとつです。そのうち国宝に指定されている天守は、彦根城のほか、松本城、犬山城、姫路城、松江城の5城のみです。
彦根城天守は、昭和27年(1952年)3月29日に、附櫓(つけやぐら)及び多聞櫓とともに国宝に指定されました。三重三階の天守は、通し柱を用いず各階を積み上げていく古い形式を残しているとされ、築城当時の技術や意匠を今に伝える貴重な建造物です。山上に建つため、最上階からは城下町や琵琶湖方面を見渡す眺めも楽しめます。
彦根城の歴史
佐和山城から彦根城へ
彦根城の歴史を語るうえで欠かせないのが、関ヶ原の戦いです。1600年(慶長5年)の関ヶ原の戦いの後、徳川家康の重臣であった井伊直政は、石田三成の居城であった佐和山城に入りました。しかし、佐和山城は西軍の中心人物であった石田三成の印象が強く残る城でもありました。
そのため、佐和山城に代わる新たな拠点として、彦根山での築城計画が進められます。1604年(慶長9年)、現在の彦根山で彦根城の築城が始まりました。井伊直政は築城前に亡くなっていたため、工事は子の井伊直継の代に本格化し、その後、井伊直孝の時代へと引き継がれていきます。
天下普請で築かれた井伊家の居城
彦根城の築城は、幕府主導の「天下普請」として進められました。前期工事では鐘の丸や本丸など城郭の主要部が築かれ、1606年(慶長11年)ごろには天守も整ったとされています。その後、大坂の陣による中断を経て、直孝の時代に後期工事が進められました。
城郭全体と城下町の整備まで含めると、築城にはおよそ20年を要し、1622年(元和8年)ごろにほぼ完成をみたとされています。彦根城には、周辺の城や寺院などから集められた材木や石材が使われ、天守は大津城天守を移築したものと伝えられています。こうした背景から、彦根城は単に美しい天守を持つ城というだけでなく、近世初期の政治や築城技術を伝える重要な城郭といえます。
井伊直孝と彦根藩の発展
彦根城の完成に大きく関わった井伊直孝は、大坂の陣で功績をあげ、のちに井伊家の当主となりました。直孝は徳川秀忠・家光・家綱の三代にわたって幕府政治を支え、井伊家は譜代大名の中でも特に重い役割を担う家柄として発展していきます。
江戸時代を通じて、井伊家は一度も国替えをされることなく彦根を治めました。幕末には、安政の大獄や桜田門外の変で知られる大老・井伊直弼も彦根藩主から幕府の要職へ進んでいます。彦根城は、こうした井伊家の政治的な立場を今に伝える城でもあります。
国宝・特別史跡として守られてきた彦根城
明治時代に入ると、多くの城が取り壊されましたが、彦根城は取り壊しを免れ、天守や櫓を今に残すことができました。彦根城天守、附櫓及び多聞櫓は1951年(昭和26年)に重要文化財に指定され、翌1952年(昭和27年)には国宝に指定されています。
また、彦根城跡は1956年(昭和31年)に国の特別史跡に指定されました。城跡全体の保存状態がよく、山頂の天守や重要文化財の櫓、麓の下屋敷、内堀や中堀などがまとまって残っています。現在は、江戸時代の政治体制を示す城郭として、世界遺産登録を目指す取り組みも続けられており、2026年(令和8年)には、滋賀県と彦根市が登録に向けた推薦書案を文化庁へ提出しています。
彦根城の見どころ
国宝天守を登る
彦根城観覧の中心となるのが、山頂に建つ国宝天守です。有料エリアの入場口から天守までは坂道と石段が続き、高低差は約50メートルあります。築城当時の地形や道筋を残しているため、歩きやすい靴で訪れるのがおすすめです。
天守内部は木造で、階段はかなり急です。エレベーターなどの設備はなく、天守内では杖や傘の持ち込みにも制限があります。足元に注意しながら登る必要がありますが、最上階からは彦根の町並みや琵琶湖方面を望むことができ、城を守る場所としての立地を実感できます。
彦根城天守の外観は、屋根の形や破風の組み合わせが多彩です。さまざまな破風を巧みに用い、高欄や花頭窓も印象的で、小ぶりながらも華やかな印象を与えます。近くで見ると、国宝天守ならではの細やかな意匠がよくわかります。
天秤櫓と廊下橋
彦根城らしい見どころのひとつが、重要文化財の天秤櫓です。表門から天守へ向かう途中、大手門側からの道と表門側からの道が合流する要所に建てられています。左右に櫓が張り出した姿が、天秤のように見えることから「天秤櫓」と呼ばれています。
天秤櫓の下には深い堀切があり、そこに廊下橋が架けられています。敵が攻め込んできた場合には橋を落として進路を断つことができる構造で、城の防御の工夫を感じられる場所です。橋の上から櫓を見上げると、石垣の高さと櫓の迫力がよくわかります。
太鼓門櫓と本丸への道
天守を目前にした最後の門が、重要文化財の太鼓門櫓です。本丸へ入る直前に位置しており、城の中枢を守る大切な門でした。門の南側には「く」の字に曲がった続櫓が付属し、敵の動きを監視しやすい構造になっています。
太鼓門櫓をくぐると、いよいよ天守が目前に現れます。坂道と石段を登ってきたあとに見る天守の姿は、写真だけでは伝わらない達成感があります。彦根城を歩く際には、単に天守だけを目指すのではなく、そこに至るまでの道筋や櫓の配置にも目を向けると、城郭としての面白さが深まります。
西の丸三重櫓
本丸の西側に広がる西の丸には、重要文化財の西の丸三重櫓が残っています。天守から少し離れた場所にあるため、時間に余裕がないと見逃してしまいがちですが、彦根城の防御を考えるうえで大切な見どころです。
西の丸三重櫓は、深い堀切に面して建てられています。敵の侵入を防ぐため、地形を利用して守りを固めていたことがわかります。天守周辺の華やかさとはまた違い、実戦的な城の表情を感じられる場所です。
名勝・玄宮園

彦根城を訪れたら、あわせて歩きたいのが玄宮園です。玄宮園は、楽々園とともに「玄宮楽々園」として国の名勝に指定されています。池を中心に島や橋、築山を配した池泉回遊式庭園で、江戸時代の大名文化を今に伝えています。
玄宮園の魅力は、庭園越しに彦根城天守を望めることです。池の水面、松、石組み、その背後に見える天守が重なり、城内とは違った落ち着いた景色を楽しめます。春の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色など、季節ごとに表情が変わるのも魅力です。
彦根城の入場券には玄宮園の入園も含まれているため、時間があればぜひ立ち寄りたい場所です。天守を見学したあとに玄宮園を歩くと、武の城と大名庭園の雅な雰囲気を一度に味わえます。
彦根城博物館で井伊家の歴史に触れる
彦根城表御殿跡には、彦根城博物館があります。彦根藩主井伊家に伝わる甲冑、刀剣、能道具、茶道具、古文書などを収蔵・展示しており、城を歩くだけでは見えにくい井伊家の文化や政治の背景を知ることができます。
博物館は有料ですが、彦根城・玄宮園とのセット券も用意されています。時間に余裕がある場合は、先に博物館で井伊家の歴史を知ってから城内を歩くと、天守や櫓、御殿跡の見え方がより深まります。なお、展示替えなどで休館日が設定される場合があるため、博物館も見学する場合は事前確認がおすすめです。
ひこにゃんに会える楽しみ
彦根城といえば、人気キャラクター「ひこにゃん」を思い浮かべる方も多いかもしれません。ひこにゃんは彦根城周辺に登場することがあり、観光の楽しみのひとつになっています。
登場場所や時間は天候や行事によって変わることがあります。会いたい場合は、事前に公式の登場スケジュールを確認しておくと安心です。歴史ある国宝天守と、親しみやすいひこにゃんの存在が同居しているところも、彦根城らしい魅力といえるでしょう。
アクセスと利用案内
彦根城へのアクセス
公共交通機関で訪れる場合は、JR彦根駅から徒歩で約15分です。新幹線を利用する場合は、米原駅でJR琵琶湖線に乗り換え、彦根駅まで約5分で到着します。京都駅からはJR新快速で約46分、大阪駅からは約80分が目安です。
車で訪れる場合は、名神高速道路の彦根インターチェンジから約10〜15分です。周辺には観光駐車場がありますが、桜や紅葉の時期、大型連休、イベント開催時は混雑することがあります。公共交通機関を利用できる場合は、彦根駅から徒歩で向かうルートも検討しやすい距離です。
開場時間・入場料
彦根城の開場時間は午前8時30分〜午後5時で、入場は午後4時30分までです。天守・天秤櫓・太鼓門櫓・西の丸三重櫓・馬屋の建物内は、終了時間までに退出するため午後4時45分に閉門します。
彦根城(玄宮園を含む)の入場料は、一般1,000円、小・中学生300円です。30名以上の団体は、一般800円、小・中学生240円です。彦根城博物館も見学する場合は、彦根城・玄宮園・博物館のセット券があり、一般1,500円、小・中学生550円です。料金や開場時間は変更される場合があるため、訪問前に公式サイトで最新情報を確認しておくと安心です。
見学時間と歩きやすい服装
天守を中心に見学するだけなら、所要時間は1時間〜1時間30分ほどが目安です。天秤櫓、西の丸三重櫓、玄宮園、彦根城博物館までゆっくり巡る場合は、2時間30分〜3時間ほど見ておくと余裕があります。
彦根城は平山城で、有料エリアの入場口から天守まで坂道と石段が続きます。天守内部の階段も急なため、歩きやすい靴で訪れるのがおすすめです。夏場は石段や天守内で暑さを感じやすいため、水分補給や暑さ対策も忘れずに準備しておきましょう。
旅の記念に——「文字のお城のしおり」彦根城

彦根城を訪ねた感動を旅のあとも手元に残したい方には、「文字のお城のしおり」彦根城もおすすめです。「お城がフォントごと飛び出した!?」というコンセプトのとおり、本のページに挟むたび、訪れた日の景色や歴史のロマンをそっと思い出させてくれる一枚。読書のしるしに、旅の記念や贈り物にもどうぞ。
よくある質問
彦根城の見学にはどれくらい時間がかかりますか?
天守を中心に見学するだけなら1時間〜1時間30分ほどが目安です。天秤櫓、西の丸三重櫓、玄宮園、彦根城博物館までゆっくり巡る場合は、2時間30分〜3時間ほど見ておくと安心です。天守までは坂道と石段が続くため、歩きやすい靴で訪れることをおすすめします。
彦根城が高く評価されている理由は何ですか?
彦根城は、国宝天守を持つ現存12天守のひとつであり、城跡全体の保存状態も良好です。天守や櫓、石垣、堀、御殿跡、玄宮園などがまとまって残っており、江戸時代の政治や大名統治のあり方を伝える城郭として高く評価されています。現在は、世界遺産登録を目指す取り組みも続けられています。
ひこにゃんにはいつ会えますか?
ひこにゃんは、彦根城周辺に1日数回登場します。登場場所や時間は天候や行事によって変わることがあります。確実に会いたい場合は、事前に彦根城公式サイトや公式SNSで最新のスケジュールをご確認ください。
まとめ
彦根城は、関ヶ原の戦い後に築かれた、井伊家ゆかりの名城です。1604年に築城が始まり、井伊直継・直孝の時代を経て、約20年をかけて城と城下町が整えられました。
国宝天守をはじめ、天秤櫓、太鼓門櫓、西の丸三重櫓、名勝・玄宮園など、見どころは多彩です。天守の美しさだけでなく、坂道や石段、堀切、櫓の配置に目を向けると、彦根城が単なる観光名所ではなく、江戸時代の政治と防御の仕組みを今に伝える貴重な城であることがわかります。
琵琶湖を望む国宝の城、彦根城。歴史ある城下町や玄宮園、彦根城博物館とあわせて、ゆっくり歩いて楽しんでみてください。
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